漆喰は優れた性質を持つ建築材料で、近年アレルギー改善に役立つのではないかと言われています。漆喰には本当にアレルギー改善の可能性があるのでしょうか。その可能性を、これから本シリーズで述べていこうと思います。
漆喰ってなんだろう
漆喰というものを昔の家でしか見たことのない人も多いと思います。科学技術の進歩によって私たちの住宅も変わってしまい、漆喰塗りの家も少なくなってしまいました。
しかし、最近になってその特性が見直されるようになり、再び脚光を浴びています。特にアレルギー症状を軽減させる働きを見込んで、住宅や病院などに使用されることがあります。古い材料のはずなのに、現在も使われ続ける漆喰とはどのようなものなのでしょうか。
日本で使われた漆喰の歴史
いつ頃から日本で漆喰が使われるようになったかは、はっきりとは分かっていませんが、高松塚古墳(694年~710年の間に成立)の壁画にも残っているように、その時代にはすでに使用されていたようです。他に日本の歴史を象徴する文化財として使われている例では、姫路城の壁面が有名です。姫路城の壁面をご覧いただければ、漆喰の持つきめの細かい美しさがお分りいただけると思います。
使われはじめたのはいつ?
いつ頃から日本で漆喰が使われるようになったかは、はっきりとは分かっていませんが、高松塚古墳(694年~710年の間に成立)の壁画にも残っているように、その時代にはすでに使用されていたようです。他に日本の歴史を象徴する文化財として使われている例では、姫路城の壁面が有名です。姫路城の壁面をご覧いただければ、漆喰の持つきめの細かい美しさがお分りいただけると思います。
漆喰が一般的に使われるようになったのはいつごろ?
日本で漆喰が庶民の間にも広まったのは江戸時代からと言われています。それまでは、漆喰はお城の壁や武家屋敷にしか使われていませんでしたが、江戸時代から商人や豪農の家にも使われるようになりました。明治時代に入ってからは、漆喰が塗られた洋風建築も見られるようになり、壮麗な姿を現在まで伝えています。
世界中で使われていた漆喰
世界では漆喰はどれくらい昔から使われていたのでしょうか。世界最古の漆喰は、エジプトのピラミッドの墓室の中に使われており、約5000年前のものとされています。その後、漆喰はシルクロードを通って中国大陸に渡りました。中国大陸では、世界遺産となっている万里の長城にも漆喰が使われました。万里の長城ではレンガを固めるために、米粉をまぜた漆喰が使われたことが分かっています。ちなみに、日本以外で漆喰を扱う国としては、スイス、スペイン、ベトナムなどがあります。
漆喰のできるまで
漆喰の性質は原料の性質を反映したものであるため、ここでは漆喰の原料と作り方を解説します。
消石灰のできるまで
漆喰はいろいろな材料を混ぜ合わせて作ります。その主原料である消石灰(しょうせっかい、水酸化カルシウム)は、もともと石灰石というかたちで地中に存在しています。採掘した石灰石を焼成すると、生石灰(せいせっかい)になります。生石灰をさらに水と混ぜ合わせると消石灰(しょうせっかい)となり、この消石灰が漆喰の主原料になります。
消石灰を漆喰にする
もちろん消石灰を水に溶いて塗っただけでは、すぐに剥がれ落ちてしまいます。そのため、壁面などに塗布するためには固着させるための工夫を行います。その工夫とは、一つは海藻からとった糊成分を加えることであり、もう一つはスサと呼ばれる繊維質をすきこむことです。スサには、麻くずや藁くずなどの材料が多く使われます。消石灰と糊成分とスサを混ぜ合わせると漆喰が出来上がります。
本漆喰以外の漆喰
上述の作り方は、本漆喰と呼ばれる一般的な漆喰の作り方で、昔ながらの漆喰の種類としては、他にも土佐漆喰、沖縄漆喰が知られています。漆喰は日本中の各地で使われていた、なくてはならない建築材料だったのです。
漆喰の持つ優れた性質
漆喰の持つ優れた性質として、現在9点が知られています。すなわち、調湿性、殺菌性、化学物質分解性、防汚性、防臭性、断熱性、不燃性、耐久性、環境への低負荷の9点です。
調湿性
漆喰は空気中の湿気を適度に吸う性質があるため、室内を常に快適な湿度に保ってくれます。部屋の中の湿気が増え過ぎた時は、湿気を吸って漆喰の中にためこみ、逆に乾燥した時は、湿気を吐き出して湿度を保ってくれます。
調湿能力のために、漆喰は様々なアレルギーを改善させると言われており、例えば湿気を調節することにより、ダニやカビの生育に適さない環境をつくることができます。
殺菌性
漆喰は消石灰が主成分であるため、強アルカリ性を持っており、高い殺菌力を持つことが知られています。そのため、付着した細菌を分解することができ、表面を清潔に保つ働きがあります。日本プラスターが2008年に行った実験によれば、漆喰塗料でインフルエンザウイルスの不活性化に成功した事実が伝えられています。
化学物質分解性
漆喰は、ホルムアルデヒドなどの化学物質を分解する作用を持つことで知られています。主成分の消石灰が化学物質を分解し、無毒な物質に作り変えてしまうのです。そのため、化学物質アレルギーや化学物質過敏症を改善させる効果があると言われています。
防汚性
一般に壁紙として使われているビニールクロスなどは、静電気を帯びる性質のため、埃を寄せ付けてしまい、汚れに繋がってしまいます。一方、漆喰ならば帯電しにくい性質のため、汚れもつきにくくなっており、掃除の手間もあまり要りません。また、漆喰は汚れも落としやすく、水拭きで落ちない汚れは表面ごと軽く削り落としてきれいな姿を保つことができます。
ビニールクロスが時間の経過にしたがって色褪せたり黄ばんだりする一方、漆喰は時間が経っても劣化するどころか味わいのある風合いを帯びてきます。
防臭性
漆喰には、臭いを吸着して消臭する効果があることが知られています。その理由としては、殺菌力を持つ性質のため、臭い成分を分解するとも、内部の多孔質の中に臭い成分を取り込み封じ込めるとも言われています。そのため、タバコの煙やペットのにおいといった生活臭を抑える働きがあります。
断熱性
漆喰は熱を通しにくいことで知られており、現代のような耐火素材が無い時代には、土蔵やお城の壁などに使われていました。昔は、火事に備えて燃やしたくない物を土蔵にしまっておいたという話が知られています。そうしておけば、たとえ土蔵が火に巻かれても、中にしまった物は無事であったということです。
また、断熱性があるために夏の暑い日でも室内を涼しく保つことができます。
不燃性
火事が起こった時にも燃えず、煙も出さないため助かりやすいというメリットがあります。一酸化炭素中毒および青酸中毒は、火事の死因のうち多くの割合を占めますが、漆喰の壁ですと、火事の時にも有害物質を出さないため危険性が低くなっています。
耐久性
漆喰に含まれている消石灰(水酸化カルシウムCa(OH)2)の性質として、二酸化炭素に触れると化学反応が起き、硬化が進むことがわかっています。化学式で書くと、Ca(OH)2 + CO2 = CaCO3 (炭酸カルシウム)+ H2O となり、この化学式は、乾燥につれて漆喰が元の石灰石に戻りながら硬化することを示しています。
漆喰は二酸化炭素と反応して硬化することで、何十年もの年月に耐える耐久性を持つようになります。
環境への低負荷
石灰も繊維も、すべて自然に帰る材質のため、解体の際にも環境を汚しません。他の建材ですと、防虫剤や防腐剤といった薬剤が使われているために、環境への影響を考えなければなりませんが、漆喰ですとはるかに影響は少なくなります。
まとめ
漆喰がどのようなものか駆け足で述べてきました。上述の性質のうちアレルギー改善に役立つものは、調湿性、殺菌性、化学物質分解性、防臭性になります。次回は、アレルギー症状を解説した後で、症状軽減の可能性について、アレルギーの種類ごとに見ていきたいと思います。
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