これまで漆喰の優れた点について、解説してきました。しかし、漆喰には欠点もあります。今回は漆喰を賢く使うために、漆喰の注意点を解説していきます。
漆喰の注意点
▲漆喰の壁(フローリングや漆喰のメーカー「アトピッコハウス」より引用、https://www.atopico.com/message/kabe_answer.php)
この項では、これまでに解説できなかった漆喰についての様々な注意点を述べていきます。漆喰には、これまで触れてきたような優れた点が多数ありますが、アレルギー症状を持つ方にとっては注意しなければならない点もあります。
注意点その1 化学物質が含まれているかもしれない
現在手に入れられる漆喰には、化学物質が添加されている可能性が高いと言わざるを得ません。ホームセンターなどで売られている調合済みの漆喰については、つなぎの糊成分に化学糊が使われている場合があるのです。化学糊を使用すると値段を安価に抑えることができますが、体質によっては当然アレルギー反応が出る可能性が高まります。そのため、買う時には成分を確かめる必要があります。
「F☆☆☆☆」って何?
商品によっては「F☆☆☆☆」という表示があるものがあります。これは「フォースター」と読み、ホルムアルデヒド関連の商品につけられる安全基準の規格を指しています。JIS規格の中で高い安全性を示した商品につけられるマークであり、星の数が多いほど安全性が高くなっています。フォースターは最高の安全性を持っていることを表しており、内装材として使う面積が無制限になっていることを表します。
「F☆☆☆☆」でもホルムアルデヒドは出る
ただ、気をつけたいことはF☆☆☆☆の製品でもホルムアルデヒドの放散量が最も少ないということであり、放散量がゼロではないということです。そのため、ホルムアルデヒドにアレルギー症状や過敏症状を示す人は、自然素材しか使っていない塗料を使う必要があります。
注意点その2 においがある
漆喰にはにおいがあります。いわば海のようなにおいです。この原因には二つ考えられ、一つは糊に由来するにおい、もう一つは消石灰に由来するにおいです。伝統的な糊は海藻のフノリから作られていたため、どうしても生臭いにおいは避けられませんでした。消石灰の原料となる石灰も、元々は太古の貝殻やサンゴなどの堆積物ですから、海のようなにおいがします。
乾燥すれば気にならない
もっとも、乾燥すればにおいは殆ど気にならなくなりますが、時々においが残る場合があります。においが気になるかどうかは、個人差があるため一概には言えませんが、苦手な人がにおいを嗅ぐと気分を悪くしてしまうこともあります。
注意点その3 調湿性能
建材の調湿性能はJIS規格で定められており、JIS A6909では、吸放湿量が70g/m2/24hであれば、調湿能力があると認められます。JIS規格のこの数字は、試験片が24時間のうちにどれだけの量の水蒸気を吸い込み、また別の24時間で放出したかを示すものです。つまり、吸い込み、かつ吐き出した水蒸気量が70g以上だと調湿性能があると認められます。この数値を満たさないものは調湿能力があるとはみなされません。漆喰を選ぶときの目安にしてみてください。
珪藻土という材料について
▲珪質頁岩(けいしつけつがん、珪藻土の固まったもの(「有限会社 稚内グリーンファクトリー」より引用、http://www.w-greenfactory.co.jp/keisodo.html)
工務店のホームページなどで、珪藻土という言葉が見受けられるでしょう。「調湿性能は漆喰を上回る」と書かれることもある珪藻土は、どのようなものなのでしょうか。
珪藻土ができるまで
漆喰は複数の原料から作られますが、珪藻土はそのまま珪藻土という物質からできています。珪藻土とは、太古の海に住んでいた有孔虫という生物の化石が積み重なってできた物質です。ちなみに、有孔虫はアメーバのような原生生物の一種で、殻を持っています。この有孔虫の殻が堆積したものが長い年月をかけて地層となり、珪藻土となります。
珪藻土の特性
珪藻土の特性はその多孔質の構造にあります。珪藻土の表面には無数の穴があり、多くの微細な空間を持っています。漆喰も多孔質構造を持っているため、珪藻土も漆喰と同じような利点を持っています。
調湿性能
▲珪藻土の顕微鏡写真(「奥能登珠洲市の七輪屋さん」2015年1月13日の記事より引用、http://shichirin-kagi.blogspot.jp/2015/01/blog-post.html)
珪藻土の特にすばらしい特徴となっているのは調湿性能です。珪藻土には0.1~1ミクロンという微細な穴が無数に開いているため、吸湿性能だけで言えば漆喰よりも優れている場合が多いのが特徴です。
多孔質構造による防臭性
また、多孔質構造のため漆喰と同様に防臭性を持っています。
断熱性
珪藻土は素材として熱を通さないため、断熱性を持ちます。そのため、夏は涼しく、冬は暖かい空間を演出できます。
耐火性
今はあまり使わなくなりましたが、七輪の土台として使われている白っぽい素材をご存じでしょうか。あれが珪藻土です。古くから高い耐火性能で知られており、七輪の他には耐火レンガなどにも使用されてきました。融点は1250℃で、火を押し付けた位では黒ずむ程度で燃えることもありません。
珪藻土を選ぶときの注意点
固化材に注意
珪藻土を選ぶ時には固化材に注意しなければいけません。この選択がうかつだと、期待した効果を得られないことがあります。
実は珪藻土はそれ自体では固まる性質を持ちません。そのため、糊の役目を果たす固化材を添加する必要があります。その点は、漆喰にも糊が混ぜられている点と変わりません。
化学素材の固化材に注意
珪藻土に混ぜられる固化材は、あまり安価なものだと糊に化学物質が含まれていることがあります。もしも化学物質の含まれる珪藻土を壁材に使用してしまうと、人によってはアレルギー反応を示してしまうかもしれません。また、化学合成された糊を使っている珪藻土系塗料は、多孔質構造が崩れてしまい、本来持っている調湿性能や防臭性を発揮できないことがあります。その理由は、化学合成糊が珪藻土の多孔質部分を塞いでしまい、空気中の湿気やにおい成分を吸い込めなくなってしまうからです。
珪藻土には無い漆喰の利点
これまでに述べた通り、珪藻土は漆喰と同じような特性を持っています。純粋な調湿能力では珪藻土が優れているため、珪藻土を選ぶべきなのでしょうか。しかし漆喰には、珪藻土には無い利点があります。
その1 殺菌性
漆喰は強アルカリ性を示しますが、珪藻土はアルカリ性を示しません。そのため、珪藻土にはカビが生えますが、漆喰にはカビが生えません。
その2 ホルムアルデヒドの分解性
漆喰の主成分である消石灰はホルムアルデヒドの分解性を持ちますが、珪藻土は持ちません。
その3 仕上がり
漆喰は乾燥すると滑らか仕上がりになるのに対し、珪藻土は乾燥するとザラザラした仕上がりになります。乾燥した時の珪藻土は固くなってしまうため、ぶつかったりすると肌を擦りむいてしまうかもしれません。特に、小さい子どものいる家庭では気をつけた方が良いでしょう。
あまり違いがないこともある
工務店によっては漆喰と珪藻土を混ぜた塗料を使っていることもあります。そのような塗料では、珪藻土の固化材として石灰を使い、殺菌性、ホルムアルデヒド分解能力を持たせている場合もあります。そうした塗料は、漆喰と珪藻土の優れた点を併せ持つことになります。
まとめ
以上、漆喰の注意点について述べてきました。デメリットを考慮してみても、漆喰は優れた建築材料と考えます。今回の解説が、皆様のお役に立てば幸いです。
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