花粉症とは、花粉をアレルゲンとして起こるアレルギー症状です。漆喰は花粉症の症状も軽減できるといわれますが、本当でしょうか。今回は、漆喰が花粉症を改善させる可能性を持つことを述べていきたいと思います。
花粉症の原因
原因となる物質
花粉症は、花粉を構成するタンパク質が粘膜に作用することによって引き起こされます。例えばスギ花粉ならば、Cryj1およびCryj2という二種類のタンパク質が原因となって症状が起きることが知られています。
▲花粉症を引き起こすCryj1およびCryj2
(ダイキン工業株式会社ホームページより引用、http://www.daikin.co.jp/air/knowledge/labo/kafun/)
花粉症の原因となる植物
木本植物(いわゆる木に分類される植物)では、スギの他、ハンノキ、コナラ、クリ、アカマツ、シラカバ、ヒノキ、イチョウ、ケヤキなどの花粉で発症する事例が報告されています。
草本植物(草に分類される植物)では、イネ科の植物、キク科の植物で発症する場合があり、キク科の植物の中でもヨモギとブタクサの花粉症がよく知られています。
その他、イチゴ、リンゴ、バラ、ウメなどでも発症する場合がありますが、これは職業の中で日常的に扱うなどして長時間触れていないと発症しないとされています(協和発酵キリン株式会社 花粉症ナビ(http://www.kyowa-kirin.co.jp/kahun/about/other.html)を参照)。
花の咲く時が花粉症の時期
春先のスギ花粉の季節が花粉症の時期として有名ですが、その他の植物でも起きる病気であるため、それぞれの花の季節によって起きるおそれがあります。
花粉症として代表的な症状であるスギやヒノキは、春に花粉症を引き起こします。関東地方では、スギは2月~4月にかけて花粉のピークを迎え、ヒノキは3月~4月にかけてピークを迎えます。つづく5月~6月にイネ科の植物の開花シーズンが訪れ、さらに8月~9月にかけてはブタクサの花粉が散るようになります(「エスエス製薬 花粉カレンダー」(http://www.ssp.co.jp/alesion/allergy/calendar.html)を参照)。
花粉症は年々増えている
東京都が2006年10月~11月に行った調査で、スギ花粉患者の有病率が、あきる野市28.0%、調布市27.1%、大田区28.5%と記録されており(環境省「花粉症環境保健マニュアル2014」(https://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/manual/full.pdf)より)、この数字は1996年に行われた前回の同調査より増えています。罹患者が年々増えているため、今後も身近な病気であり続けるでしょう。
花粉症の治療法
治療法としては、投薬療法、免疫療法、手術療法が主に挙げられます。唯一完治が望めるのは免疫療法ですが、完治までには3~5年の時間を必要とします。そのため、治療を行う場合でも、そうでない場合でも、いかにして身の回りのアレルゲンを減らすかが重要になるでしょう。
漆喰でなぜ花粉症の軽減を見込めるか
▲花粉の飛散をおさえる漆喰(「有限会社 岩建工房」ホームページより引用、http://www.iwaken.biz/?itemid=615&catid=34)
花粉症は身近な植物がアレルゲンとなるため、対策が難しい病気です。内装を漆喰に切り替えれば、室内だけでも花粉症の影響を減らせるかもしれません。
漆喰を使用した住宅に暮らすと、花粉症の症状が緩和されるという意見を聞くことがあります。この原因については残念ながらはっきりとは分かっていません。その理由は、「漆喰住宅」に住み始めてから花粉症の症状が軽減されたという明確な研究が、まだなされていないためです。そのため、なぜ漆喰が花粉症に効力を持つのか、推測できる理由を以下にまとめてみます。
理由その1 調湿機能で花粉の飛散が抑えられる
まず考えられる理由は、漆喰の持つ調湿機能です。漆喰は多孔質構造を持ち、内部の微小な空間に湿気を貯蔵できる性質があるため、部屋の中の湿度をほどよく調節します。この調湿機能によって花粉の飛散を抑えることができると言われています。湿気がつくことで花粉を重くすれば、その分花粉が早く床に落ちます。
理由その2 調湿機能で鼻に優しい環境ができる
別の理由として、漆喰の持つ調湿機能によって湿度が保たれた結果、粘膜への負担が少ない環境になったことも推測できます。
春先など花粉症の季節には空気が乾燥しやすく、鼻腔内の粘膜も乾燥しがちです。また、花粉症の薬によっては、鼻腔内の粘膜が乾燥するという副作用が生じることもあります。もし鼻腔内の粘膜が乾燥すると、最悪かゆみや出血を伴う場合があり、乾燥性鼻炎が起こるかもしれません。乾燥性鼻炎とはその名の通り、鼻腔内が乾燥して鼻炎のような症状が起こる病気です。
乾燥するとアレルギーも悪化しがち
乾燥性鼻炎はただ不快なだけではなく、花粉症やその他のアレルギーにかかりやすくなるリスクを高めます。鼻腔内の粘膜が乾燥し、バリア機能が弱まれば、それだけアレルゲンへの対抗手段も無くなってしまいます。結果として、さらにアレルギー症状が悪化することや、健康な人でもアレルギーになってしまう可能性が高まります。アレルギーの予防のためにも、空気中の湿度は適度に高めておく必要があります。
調湿機能で洗濯物も干しやすくなる
また、花粉症の方であれば洗濯物を外に干す訳にはいかないと思いますが、「漆喰住宅」ならば室内干しの洗濯物も乾きやすくなります。調湿機能により、洗濯物から出る余分な湿気を漆喰が吸いこんでくれるからです。
理由その3 静電気で花粉を寄せ付けない
花粉は漆喰の壁に付着しにくいため、花粉が部屋に残りにくくなり、花粉症の症状を軽減することができます。
なぜ漆喰は花粉の付着を防ぐことができるのでしょうか。その理由として、漆喰の主成分である消石灰(水酸化カルシウム)が静電気を帯びにくい性質を持っていることが挙げられます。静電気を蓄える他の建材ならば、花粉にたまった静電気と引き合って花粉を付着させますが、漆喰なら静電気同士で引き合うことがないため、付着を防げます。
漆喰とあわせた花粉症の予防策
以上紹介しましたように、漆喰は花粉症を抑える機能を持っていますが、その機能は花粉の飛散を抑え、アレルゲンの量を減らすものであり、治療を約束するものではありません。つまり、漆喰を塗るだけでは花粉症の症状をすべて抑えることは難しいと思います。そのため、漆喰が室内に舞う花粉の量を抑えてくれる効果に加え、他の予防策をとれば、より快適に過ごせると思います。
予防策その1 部屋に花粉を持ち込まない
予防策としてまず挙げられることは、外出の機会をなるべく減らすことです。用事があって外出する時にも、マスクなどで粘膜に花粉が触れる機会を減らしておくと良いでしょう。
外出から帰った時は、粘膜に付着した花粉を洗い流すため、まず手洗い及びうがいをしましょう。その他、部屋に舞う花粉を抑えるため、玄関先で衣服に付いた花粉を払っておくと良いでしょう。
予防策その2 外気をなるべく入れない
これは基本的な対策ですが、晴れた日はなるべく換気をせず、室内の花粉の量を増やさないことが重要になります。花粉は、雨の日にはほとんど飛ばなくなるため、部屋の空気を入れ替えたい時は、雨の日に換気を行いましょう。もっとも、雨上がりには植物の花が開き、多量の花粉が一気に飛ぶことが考えられるため要注意です。あるいは、空気清浄機やエアコンの使用を考えてみても良いでしょう。
予防策その3 掃除
どんなに工夫をしても、わずかな隙間から花粉が入ってくることがあるでしょう。掃除機などで定期的に掃除を行い、室内のアレルゲンを減らしましょう。
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